技能実習生の受け入れ企業に求められる条件・資格を分かりやすく解説

技能実習生の受け入れ企業に求められる条件・資格を分かりやすく解説

技能実習制度は、日本の技術や知識を海外に伝えることを目的とした制度で、企業にとっても若く意欲的な人材を受け入れることで職場の活性化や人材教育ノウハウの蓄積といった多くのメリットがあります。

本記事では、技能実習生を受け入れるために企業が満たすべき条件や、受け入れ成功のポイントについて詳しく解説します。また、技能実習制度には受け入れ方式として、企業単独型と団体監理型(監理団体と連携して受け入れを実施)の大きく2種類がありますが、98%以上を占める団体監理型の前提で解説します。

30秒でわかる!このコラム記事のポイント

企業が技能実習生を受け入れるためには以下のような条件を満たす必要があります。

  • 前提条件:受け入れ可能な業種は91職種168作業と受け入れ人数には上限がある
  • 基本条件:職員から必要な人員を配置すること、申請段階や受け入れ後にも作成が必要な書類がある
  • 環境条件:日本の労基法に沿う必要があるほか、実習生の泊まる宿舎も重要

なお、この記事では技能実習生受け入れ時に企業に求められる条件に焦点を当てて解説しています。技能実習制度の基本的な内容については、こちらの記事をご確認ください。
【受け入れ検討企業様必見】技能実習生とは?制度や仕組みをわかりやすく解説

技能実習生を受け入れるために企業に求められる条件とは?

受け入れ条件とは?技能実習生を受け入れるには、企業がいくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、前提条件から基本的な条件、環境整備や労働基準法に関する条件まで、具体的に解説します。

前提条件:業種(職種と作業)と受け入れ人数、サポート体制

まず、技能実習生はどのような業種の企業でも受け入れられるわけではありません。技能実習生を受け入れられる業種は、法律で定められた91職種168作業(2025年時点)に限られています。建設業や製造業はその代表例であり、特に人手不足が深刻な分野で多くの企業が活用しています。

また、企業に求められる条件とは少々異なりますが、技能実習生の受け入れ人数には制限があり、企業の従業員数に応じて受け入れ人数の上限が定められています。自社の場合は、最大で何人まで受け入れることができるか知っておく必要があります。

技能実習生を受け入れる企業の業種(職種と作業)

前述のとおり、技能実習生を受け入れられる業種は、91職種168作業(2025年時点)に限られています。 具体的には、以下のような業種が対象です。

職種数・
作業種数
代表的な職種
農業・林業関係 3職種7作業 耕種農業や畜産農業、林業
漁業関係 2職種10作業 漁船漁業や養殖業
建設関係 22職種33作業 建築大工や石材施工、とび、防水施工など
食品製造関係 11職種19作業 食品製造業やハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造など
繊維・衣服関係 13職種22作業 服製造や寝具製作、織布運転など
機械・金属関係 17職種34作業 鋳造や鍛造、機械加工、鉄工など
その他 21職種39作業 家具製作やプラスチック成形、塗装、介護、クリーニング、木材加工など
社内検定型の職種・作業 2職種4作業 空港グランドハンドリングやボイラーメンテナンス

受け入れを検討している企業は、自社の業種が対象職種に該当するかを事前に確認する必要があります。

企業の従業員数に応じた受け入れ人数(団体監理型の場合)

技能実習生の受け入れ人数は、企業の従業員数や技能実習の段階(1号、2号、3号)によって異なります。また、優良認定を受けた企業は、通常より多くの実習生を受け入れることが可能です。

①1号技能実習生(初年度):以下の表のとおり、基本人数枠は従業員数によって段階的に決定されます。また、優良な実習実施者(受け入れ企業・監理団体)の場合は基本人数枠の2倍まで受け入れが可能となります。

受け入れ企業様の常勤職員総数 基本受け入れ可能人数(基本人数枠)
301名以上 常勤職員数の5%
201名以上300名以下 15名以内
101名以上200名以下 10名以内
51名以上100名以下 6名以内
41名以上50名以下 5名以内
31名以上40名以下 4名以内
30人以下 3名以内

②2号技能実習生(2年~3年目):2号技能実習生の場合は基本人数枠(1号)の2倍まで受け入れが可能となります。また、優良な実習実施者(受け入れ企業・監理団体)の場合は基本人数枠の4倍まで受け入れが可能となります。

③3号技能実習生(4年~5年目):3号技能実習生を受け入れる場合、前提として企業が優良な実習実施者として認定される必要があり、監理団体も同様に優良と認定される必要があります。受け入れ人数は基本人数枠(1号)の6倍まで可能となります。

ただし、各号の実習生人数は以下を超えることはできません。

  • 1号実習生:常勤職員の総数
  • 2号実習生:常勤職員総数の2倍
  • 3号実習生:常勤職員総数の3倍

企業が優良認定を受けるには、法令遵守や適切な実習環境の整備が求められます。

監理団体との連携について

冒頭でお伝えのように、団体監理型として技能実習生を受け入れる場合は、監理団体との連携が必須になります。監理団体には「一般監理事業」と「特定監理事業」の2種類があります。特定監理団体が技能実習1号・2号(=3年まで監理)を受け入れられるのに対し、一般監理団体の場合、3号まで受け入れが可能(=最長5年まで監理)となります。長期的な受け入れと信頼の受け入れ体制を考慮する場合は一般監理事業の監理団体を検討されるとよいでしょう。

協同組合APICOも厚生労働省認証の一般監理事業に該当します。質の高いサポート体制で、企業の皆様の技能実習生受け入れを支援します。

基本的な条件~①人員配置:技能実習責任者・指導員・生活指導員~

人員配置技能実習生を受け入れる企業は、技能実習責任者・指導員・生活指導員の役職を配置する必要があります。それぞれの役職の役割やなれる人の要件、向いている人の特徴について見ていきましょう。

これらの役職は役割こそ違いますが、要件を満たしていれば兼任することも可能です。

技能実習責任者

役割:技能実習全体の管理・監督を行う
要件:受け入れ企業の役員もしくは職員であること、過去3年以内に技能実習責任者講習を修了している、など
向いている人:責任感が強く、全体を見渡せるリーダーシップを持つ人

技能実習指導員

役割:実習生に対して技術や業務内容を直接指導する
要件:実習内容に関する5年以上の実務経験があることなど
向いている人:教えることが得意で、コミュニケーション能力が高い人

生活指導員

役割:実習生の生活面をサポートし、相談に乗る
要件:受け入れ企業の役員もしくは職員であることなど
向いている人:親身になって話を聞ける人や、異文化理解に興味がある人

基本的な条件~②書類作成:申請書類と帳簿書類~

書類技能実習生を受け入れる際には、複数の申請書類を作成し、適切な機関に提出する必要があります。また、受け入れ後にも作成が必要な帳簿書類もあります。特に申請書類は多岐にわたりますが、作成が必要な書類についていくつか具体例をご紹介します。

申請時に必要な書類

申請に当たっては40を超える書類があり、技能実習の区分などによって提出の有無も変わってきます。主に以下のような書類を受け入れ企業は監理団体と連携して用意する必要があります。

  • 技能実習計画:技能実習生がどのような技術や知識を学ぶのかを具体的に記載した書類
  • 実習実施予定表:技能実習計画に記載された内容を、期間や場所などの情報も含めて具体的にまとめたスケジュール表
  • 申請者の誓約書:申請者(受け入れ企業)が技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法令上の義務を遵守することを誓約する書類
  • 申請者の概要書:実習実施者となる受け入れ企業の基本的な情報、事業の規模、および過去の技能実習の受け入れ実績などを一覧にした書類

受け入れ後に作成が必要な帳簿書類

受け入れ後にも、企業で作成・保管する必要のある書類も複数あります。これらは、技能実習をしっかりと行ううえで重要な書類となります。

  • 技能実習生の管理簿:技能実習生に関する基本的な情報を管理するための帳簿
  • 認定計画の履行状況に係る管理簿:認定された技能実習計画が、実際に計画通りに履行されているかを確認・記録するための帳簿
  • 技能実習日誌:技能実習生が日々どのような作業を行い、どのような技術を習得したかを記録する帳簿

これらの書類は、技能実習制度を適切に運用するための基盤となるものです監理団体のサポートを活用しながら、正確かつ迅速に対応することが求められます。

環境整備に関する条件~①労働環境:日本の労基法に沿った労働環境の整備~

労働環境技能実習生を受け入れる企業は、日本の労働基準法(労基法)を遵守し、適切な労働環境を整備する必要があります。技能実習生も日本人労働者と同様に労基法の適用を受けるため、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

最低賃金の遵守

技能実習生には、地域ごとに定められた最低賃金以上の給与を支払う必要があります。最低賃金は都道府県ごとに異なり、毎年改定されるため、最新の情報を確認することが重要です。例:東京都の最低賃金(2025年10月時点)は時給1,226円

労働時間と残業の管理

1日8時間、週40時間を超える労働は原則として禁止されています。これを超える労働を行う場合は、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

残業も月45時間、年間360時間を超える残業は原則として認められません。特別な事情がある場合でも、月100時間未満、年間720時間以内に抑える必要があります。休憩時間も同様に労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があり、週1回以上の休日を確保することが義務付けられています。

各種社会保険への加入

技能実習生も日本の社会保険制度の対象となります。健康保険や厚生年金保険、労災保険、雇用保険に加入することが義務付けられています。なお保険料は企業と技能実習生がそれぞれ負担しますが、給与から天引きする場合は、事前に本人へ説明し、同意を得る必要があります。

安全衛生管理の徹底

技能実習生が安全に働ける環境を整えるため、安全衛生管理を徹底する必要があります。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 機械や設備の点検・整備を定期的に行う
  • 危険な作業には適切な保護具(ヘルメット、手袋など)を支給する
  • 実習開始時に、安全な作業手順や緊急時の対応方法を指導する
  • 労働災害が発生した場合は、速やかに労働基準監督署に報告し、適切な対応を行う

環境整備に関する条件~②宿舎環境:技能実習生が生活する宿舎環境の整備~

宿舎技能実習生が安心して生活できる宿舎環境を整えることも、受け入れ企業に求められる重要な条件です。宿舎環境が不十分だと、実習生の生活満足度が低下し、トラブルの原因となる可能性があります。以下に、宿舎に求められる要件の例を解説します。

居住スペースの確保

宿舎には、技能実習生一人当たりの居住スペースを十分に確保する必要があります。例えば、寝室については、『技能実習制度 運用要領』に以下のように記載があります。

寝室については、床の間・押入等、技能実習生が実際に使用できないスペースを除き、1人当たり4.5㎡以上を確保することとし、個人別の私有物収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓、その他の社会通念上生活に必要な採暖・冷房設備等を設ける措置を講じていること

共有設備の整備

例えば以下のように共同設備を整備する必要があります。

  • トイレや浴室は清潔に保ち、十分な数を設置する
  • 温水シャワーを利用できる環境を整える
  • 調理器具や冷蔵庫を備えたキッチンを設置する
  • 食材を保存するためのスペースを確保する
  • 洗濯機を設置し、実習生が自由に使用できるようにする

防災設備の設置

防災設備の設置も考慮する必要があります。

  • 火災報知器:各部屋に火災報知器を設置する。
  • 消火器:宿舎内に消火器を設置し、使い方を実習生に説明する。
  • 避難経路の確保:宿舎内に避難経路を明示し、避難訓練を実施する。

技能実習生が快適に生活できる宿舎環境を整えることは、実習生のモチベーション向上やトラブル防止に繋がります。企業は、宿舎環境の整備を怠らず、実習生が安心して生活できる環境を提供することが求められます

受け入れが難しい企業の特徴とは?注意すべきポイント

注意技能実習生を受け入れる際には上述した各種条件を満たす必要があります。そのため、以下のような項目に当てはまる企業は注意が必要です。

  • 法令遵守が不十分:最低賃金や労働時間の管理が適切でない
  • 環境整備が不十分:宿舎や労働設備が基準を満たしていない
  • サポート体制の欠如:実習生への指導について知識や経験が乏しいうえに、企業単独型で受け入れを検討している

その他、過去に技能実習計画について認定を取り消された場合、5年を経過しないと新しく実習生を受け入れることができません。

技能実習生受け入れ成功のポイント!監理団体の活用法

連携技能実習生の受け入れを成功させるためには、信頼できる監理団体を活用することが重要です。実績が豊富で、サポート体制が整っている団体を選ぶことがポイントです。監理団体には「特定監理団体」と「一般監理団体」の2種類があり、それぞれでできることに違いがあるほか、監理団体ごとに対応できる言語やサポート内容など差があります。

監理団体のホームページなどをチェックして、書類作成の支援、実習生の生活サポート、トラブル対応などどこまで対応してくれるのかしっかりと確認しましょう。

まとめ: 技能実習生受け入れを成功させるために、まずは相談を!

技能実習制度は、日本の技術や知識を海外に伝えることを目的として企業が若く意欲的な人材を受け入れるメリットがある一方、業種、人数、人員配置、労働・宿舎環境整備、書類作成など多岐にわたる条件を満たす必要があります。成功には信頼できる監理団体の活用が不可欠です。

技能実習生の受け入れを検討している企業様は、ぜひ協同組合APICOにご相談ください。 豊富な実績と専門的なサポートで、受け入れに関する不安や疑問を解消します。まずはお気軽にお問い合わせください!

※本記事の内容は2025年10月時点の情報に基づいています。法令や制度の内容は変更される可能性があるため、最新情報をご確認ください。

技能実習生の受け入れ条件に関するQ&A

Q1.技能実習生の受け入れに当たって企業に求められる条件を教えて

A1.受け入れ可能な業種であることや申請手続き、人員配置、労働環境、宿舎環境の整備などが必要です。また、これらの対応を企業が単独で実施するにはかなりの労力が発生するため、監理団体のサポートのある、団体監理型の受け入れ体制が一般的とされています。

Q2.初めて技能実習の受け入れを考えてますが、条件が多くてどうしたらいい?

A2.監理団体によるサポートがある“団体監理型”での受け入れをお勧めします。しっかりとしたサポート体制のある監理団体をお探しの場合は協同組合APICOへご相談ください。

Q3.建設業系の事業ですが、技能実習生の受け入れができない職種・作業もあるの?

A3.技術習得が目的のため、同一作業の反復のみの作業や通常業務以外の作業を行わせようとする場合、受け入れが認められません。自社の業務で受け入れが可能かご心配な方は協同組合APICOへご相談ください。